2000年4月23日

未来派、速度へのまなざし

 今世紀初頭にイタリアで起こった芸術運動を御存知だろうか。それは「未来派」と呼ばれる、前衛芸術の一大ムーブメントだった。詩人であり、天才的な煽動家でもあるフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティを先頭に繰り広げられたこの運動は、機械文明の称揚、速度への憧れ、伝統や権威の否定、また流線型の多用と大胆なフォルムを特徴とし、絵画、彫刻、文学、演劇、音楽、建築、写真、映画、グラフィック・デザイン、ファッションなど、現代の我々を取り巻く芸術全般に多大な影響を及ぼした。しかしながらその運動自体は、速度や機械といった力への、過度の欲望を引き起こし、結果として破壊的・排他的なファシズムと軌を一としてしまったのだ。近年、アートの世界ではこの未来派を再評価する動きが高まっているが、私はそこに嫌な気配を感じとる。つまり閉塞的な気分に纏わりつく時代背景が、驚くほど第二次大戦前の不安な叫びと似ているからだ。

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